住宅を守ることを目的に地震保険や火災保険への加入を検討する方は少なくありません。
地震や津波、火災などの災害が多い日本で住む以上、被災した損害をカバーするための保険が必要不可欠であるためです。
しかし、「地震保険と火災保険の違いがいまいちわからない」「費用がどの程度必要なのかわからず心配」といった不安を抱えている方もいます。
この記事では、地震保険と火災保険の特徴や補償内容、住宅購入にあたって保険について知っておきたい注意点などをまとめて紹介します。
地震保険への加入をおすすめしたい人にも触れていますので、ぜひご一読ください。
地震保険とは、地震や噴火、津波などの災害で発生した住宅の損害を補償する保険です。
一般人は民間の保険会社と契約することになりますが、国が地震保険法に基づき民間の保険会社に再保険しています。
再保険とは万が一保険会社が経営破綻などで保険金の支払いが困難になった場合でも、政府の責任で補償される仕組みのことです。
つまり、地震保険は国がバックアップしている公共性の高い保険であり、どの保険会社で加入しても保険料や補償は同じ内容になっています。
なお、損害保険料率算出機構のデータによると、地震保険の世帯加入率は2021年で34.6%、付帯率は2021年度で69.0%です。
世帯加入率に共済などの地震保険は含まれていませんが、日本の全世帯の3分の1程度にとどまっています。
出展:損害保険料率算出機構
地震保険と火災保険には次の4つのポイントで違いがあります。
とくに、3つ目の「所得控除の違い」は、確定申告での手続きや節税対策を考えるうえでも重要なポイントです。
ひとつずつ解説しましょう。
火災保険と地震保険では、補償範囲に関して次のような違いがあります。
まず、火災保険は火災によるさまざまな住宅の損害を補償します。
具体的には以下のような損害です。
・ 火災
・ 落雷
・ 破裂
・ 爆発
・ 風災
・ 雪災
・ 雹災
また、加入する保険商品によって水災や水漏れ、盗難や破損なども補償される場合があるので覚えておきましょう。
一方で、地震保険は以下のような地震や噴火、津波に起因した損害を補償してくれます。
・ 住宅の倒壊や損壊
・ 住宅の埋没
・ 火災
・
津波による住宅の損壊や倒壊
上記のように、地震保険は火災保険が補償してくれない災害による損害もカバーできる保険となっています。
火災保険の保険料は、住宅の構造や所在地、補償内容などによって異なります。
例えば、一戸建て(鉄骨)で火災・風災といった最低限の補償の場合、5年契約で15,000円〜30,000円が相場です。
地震保険も住宅の構造や所在地で異なる点は火災保険と同じです。ただし、火災保険とセットで加入しなければならないため、火災保険料に地震保険料が上乗せされます。
例えば、一戸建て(鉄骨)で補償内容が建物500万円、家財150万円の場合、5年契約(火災保険料を含む)で東京都なら約50,000千円、大阪府約36,000円、福岡県約33,000円が相場です。
このように、地震保険への加入を検討する際は、火災保険も加入しなければならないことを覚えておきましょう。
確定申告をする際、火災保険は所得控除の対象になりませんが、地震保険は対象になります。
地震保険料の所得控除額は、所得税の場合で50,000円以下なら全額、50,000円以上なら一律50,000円です。
また、住民税は最大25,000円の所得控除が受けられます。
出展:国税庁
出展:日本損害保険協会
このように、地震保険は所得控除が受けられるため、加入した際は手続きを忘れないようにしましょう。
なお、会社員で年末調整にて控除された場合は確定申告を行う必要はありません。
法律上、火災保険の加入は義務ではありませんが、住宅ローンの融資を受けるなら基本的に加入しなければなりません。
火災保険の加入を融資の必須要項としている金融機関は多く、未加入のままではローンの借り入れができない可能性が高いためです。
その点、地震保険には加入の義務はありません。
火災保険と地震保険にはこのような違いがあることを理解しておきましょう。
ちなみに、金融機関が火災保険の加入を必須にしている理由は、担保に設定した住宅が被災すると物件自体がなくなったり、担保の価値が下がったりする、貸し倒れのリスクに備える必要があるためです。
意外にも火災保険には入っているものの地震保険には未加入というケースは多く見られます。
しかし、地震による被害は火災よりも甚大な可能性が高く、具体的な発生日時や場所も予測できないため、加入しておいた方が安心です。
特に、今後は「首都直下型地震」や「南海トラフ大地震」などの大地震が予測されているので、これらに備えるためにも積極的に加入しておきたい保険と言えるでしょう。
地震保険に加入する際の注意点は次の2つです。
■保険金だけで再建は困難
■火災保険とセットで加入する必要がある
とくに、1番目の「保険金だけで再建は困難」という点は、地震保険に入っていればマイホームの再建資金が補償されると勘違いしている人が多いので、確認しておいてください。
地震保険に加入している場合でも、地震による住宅の損害をすべてカバーすることはできません。
もともと地震保険は被災後の生活再建を目的としており、保険金は当面の生活費を補償する金額に設定されているためです。
このため、地震保険は住宅再建の費用をすべてカバーできない補償内容になっています。
なお、地震から10日以降の損害は補償されないなどの条件があり、想定した保険金を受け取れない可能性もあるので注意しましょう。
出展:政府広報オンライン
地震保険は火災保険とは異なり、単独で加入することはできません。
地震による損害をカバーしたいのであれば、火災保険と地震保険はセット加入を前提にする必要があります。
とはいえ、火災保険も住宅を守るうえで必要不可欠な保険であるため、大きなデメリットと捉える必要はありません。
地震保険を検討している方は、火災保険とのセット加入を検討するようにしましょう。
なお、すでに火災保険を契約している場合でも、地震保険に中途加入できる場合もあります。
地震保険に途中加入したい場合は契約先の保険会社に確認してください。
地震保険に加入をおすすめしたい人の特徴は以下のとおりです。
とくに、3番目と4番目の「預金が少ない人」、「被災すると収入がなくなる可能性が高い人」は被災後の生活が立ちゆかなくなるリスクが高いため、ぜひ地震保険を検討してみてください。
住宅が地震によって被災した場合でも、住宅ローンの返済義務は残ります。
生活再建の費用とは別途、返済資金を確保しなければなりません。
そのため、被災による損害の補償は必要不可欠です。
しかし、火災保険では火災も含め、地震による損害は補償されません。
地震による火災をカバーするという意味でも地震保険をセットで加入しておきましょう。
新築住宅が地震で被災した場合、住宅ローンの残額が多く残っているうえに貯金が少ないケースが多いため、返済が大きな負担になる可能性があります。
購入直後は頭金や手数料などの支払いで貯金が大きく減っているためです。
したがって、タイミング悪く新築を建てたばかりの時に大きな震災に遭ったとしても生活再建の見通しが付くように、地震保険への加入をおすすめします。
被災後の生活を貯金で賄えない人は、地震保険に加入しておきましょう。
国の「被災者生活再建支援制度」で支払われる支援金は最大300万円であるため、生活を再建するための費用としては足りない可能性があるためです。
出展:内閣府
実際に、東日本大震災のように年単位で避難生活が続くケースでは、一時的な生活費にしかならないという声も多くありました。
このため、貯金が少ないと感じている方は地震保険に加入して、万が一の震災に備えておくことが大切です。
大きな地震で地域全体が被災すると、復興まで職を失う可能性が大きくなります。特に、自営業で店舗や事務所を構えて土地に根ざしたビジネスをしている方は顕著です。
このような被災によって収入が途絶えるリスクが高い方にとって、生活再建のための保険金が支払われる地震保険は強い味方になるため、加入を検討してみてください。
大地震が起きる可能性のあるエリアに住んでいる方は地震保険をおすすめします。
具体的には首都直下地震が懸念される関東や、南海トラフ地震の影響があるエリアです。
上記のエリアは東日本大震災よりも多くの住宅が全壊する被害が発生すると予測されているため、被災後の生活をスムーズに立て直すためにも、地震保険に加入して地震に備えておきましょう。
地震保険は、「地震・噴火・津波・地震による火災」を補償する保険です。
国が再保険しているので、どの保険会社で加入しても保険料や補償内容が同一という特徴があります。
そのうえ、地震保険は火災保険とのセット加入が前提なので、地震保険に加入する際は加入している火災保険と同じ保険会社で加入するといいでしょう。
地震による住宅被害に備えるためにも、住宅ローンで加入を求められる火災保険とともに、ぜひ加入を検討してみてください。