不動産業界は、IT化の遅れを指摘され久しい業界です。
○不動産業界はアナログなの?
○不動産テックとは?
○今後の見通しは?
このような角度から、不動産業界のテクノロジーの進化について解説します。
不動産業界は、アナログな業界だと言われます。近年ではだいぶITツールを利用したデジタル化が進んできました。しかし、それでもいまだに不動産業界がアナログなのは、事実かもしれません。
不動産業界のアナログを示す例として、「対面ベース」と「紙ベース」が挙げられます。「対面での書類のやりとり」が、メインということです。なぜ、対面での紙ベースから脱却できないのか、いくつか理由があるでしょう。
○説明や手続きが難解だから
○扱う金額が大きいから
○慣習からの脱却が難しいから
これらが、不動産業界がアナログな理由として考えられます。
不動産には複雑な法律が付きまとうので、説明や手続きが難解なのです。難解な説明や手続きは、対面で相手の動作や表情などを逐一チェックした方が、進めやすい側面があります。
不動産は扱う金額が、非常に大きい分野です。数百~数千万円単位のお金が動くので、契約全般において非常に繊細なやり取りが求められます。
扱う金額が大きいので、デジタルベースに対するお客さまの側の心理的な抵抗が大きいのも、一因かもしれません。大きな金額が動く契約において、メールで「ご確認をお願い致します」で済ませるのは、なかなか難しいのです。
登別と室蘭にも、相当数の不動産企業が存在しますが、日本全国には12万以上の企業が存在します。その大部分は、中小・零細企業です。最新技術の導入に積極的な中小零細もありますが、昔ながらの慣習にどっぷり浸かっている業者が多いのも事実でしょう。
中には、年配の方が少数で切り盛りしている不動産会社もあります。最新技術の導入に積極姿勢を示す年配の経営者もいらっしゃいますが、どうすればよいのかわからず困っている経営者も多いようです。
「不動産×テクノロジー」。これが、「不動産テック」です。Prop Tech(Property Technology)、ReTech(Real Estate Tech)とも呼ばれます(共に「不動産テクノロジー」を意味)。
長らく続く不動産業界のアナログ状態が、業界全体の低生産性をもたらしているという指摘が止みません。現状を打開するため、各種ITツールを利用して以下のような試みがなされています。
①オンラインの活用:オンライン上での内見や重説
②スマートホーム:IoTを活用した住宅設備とIT技術の融合
③スペースシェアリング:インターネットを仲介した空きスペースの賃貸システム
④ブロックチェーンの活用:データベースの分散共有システムによる情報の透明化
⑤AIによる価格の可視化やマッチング
⑥不動産クラウドファンディング
以上の中から、代表的な不動産テックであり、今後さらに導入が進むと考えられる、①(オンラインの活用)と②(スマートホーム)について解説します。
○オンライン内見
○オンライン重説
これらが、代表的なオンラインの活用例です。
オンライン内見とは、パソコンやスマートフォンなどを使った、バーチャルリアリティーによる内見(物件の内部を見学すること)です。現地に赴かずとも、Web上で疑似的に物件を見学できます。
オンライン重説(IT重説)とは、ビデオ通話による「重要事項説明」です。賃貸・売買を問わず、物件における重要事項の説明は、国交省のガイドラインにより、これまでは対面が「望ましい」とされていました。
しかし、コロナ禍により状況が変化。国交省が2020年に提示したガイドラインにより、賃貸でも売買でも、重要事項の説明には「対面が望ましい」というハードルが撤廃されたのです。これにより、今後はオンライン重説が主流になると予想されます。
IoTによるスマートホームの例として、「スマートロックシステム」が挙げられます。スマートフォンの操作で、鍵の施錠・開錠を行うシステムです。各自のスマートフォンに、自宅の鍵アプリがダウンロードされているイメージが近いでしょう。
不動産契約の最終盤における「鍵渡し」という行為は、いずれ不要になるかもしれません。
今後、不動産においては契約の始まりから終わりまで、会社への来店が不要になるかもしれません。内見・重説・鍵渡し……。これらがすべて、Web上で完結する可能性があるからです。
少なくとも現在のトレンドは、来店不要の方向に進んでいる印象を受けます。